ボーラ現象とは

フェーン現象は風が山の斜面に沿って駆け上るときと駆け下るときとで、それぞれ空気が湿っている・乾いていると状態が異なるため気温減率も変わることで山を駆け下りてくる風が温かくなるというものでした。斜面にそって風が上昇するとき飽和蒸気まで達しなければ上昇するときも下降するときも乾燥断熱減率で温度は変わるので、このような現象は起きないので、いつでもフェーン現象が起きるわけではなく条件が整ったときにのみ発生します。

でも感覚的には高いところからの風って涼しいようなイメージがありますよね?フェーン現象の理屈を聞いてしまうとむしろ暖かい風なのでイメージと異なります。では涼しい風が吹くというイメージは間違っているのでしょうか?

答えとしては間違っていません。フェーン現象はいつも起きるわけではないし、ほかにも色々な理由があって涼しい風が吹くことが多いです。一つ一つ解説していきましょう。

①そもそもフェーン現象は発生しづらいし体験しづらい
フェーン現象は風が山のふもとから頂上を越えて向こう側へ到達するだけではおきません。もっと大事なことは斜面を登る前にたくさんの水蒸気を含むことが必要です。山を越える前水蒸気の供給があることが必要でその供給源は海です。ですので内陸ではあまり発生せず、海に近いという地理的な条件が必要です。
日本は島国なので日本アルプスを越える風はこの条件を満たしやすいですが、太平洋側-日本アルプス-日本海側と大きな範囲一定方向の風向きとなることがまず少ないです。以前説明した海風の影響で日中は太平洋側では南~東、日本海側では北~西向きの風になりやすく、夜はその逆です。山岳部では入り組んだ地形のため風は舞うことが多いです。

強い冬型の気圧配置のときは太平洋側も海風の影響より気圧の影響のほうがつよいため日本列島全体が北~西からの風になります。日本海側で水蒸気をたくさん蓄えて日本アルプスを越えるときに日本海側に大雪をもたらし、関東平野では乾いた冷たい風が吹くのは皆さんご存知の通りです。
あれっ?でもそうなると関東平野に吹く風はフェーン現象で暖かくなっているはず?そう思うでしょう。

じつは冬の北風のときはフェーン現象はいちおう発生しています。しかし冬場はもともと気温が低いため、フェーン現象による温度上昇は元々の気温の低さに打ち消され体感することはできません。風が強いので例えば0度だったのがフェーン現象で5度に上がったとしても、冷たい風には変わらずむしろ風の影響で体感温度はもっと下がってしまうのです。

フェーン現象はそもそも発生しにくい上、発生しても温度上昇は10度にもなりませんので、なかなか体験しづらいのですね。私がよく覚えているのは春など気温が20度くらいのときにフェーン現象が起きると局地的に夏日や真夏日にもなるので天気のニュースで取り上げられることがありますね。

②山からの吹きおろしは冷たい空気を巻き込むため冷たくなる
フェーン現象の説明では地上付近を吹く風が連続的に流れて山頂を越え再び地上付近に戻ってきます。一般的に日本アルプスのような3000m級の高度では地上付近の気温のように日射によって温度上昇することはありません。湿潤断熱減率は5度/1000mですが、標準的な気温減率は6.5度/1000mですのでこの場合上昇する風が山頂に達するころには周りの大気の温度のほうが冷たくなっています。山からの吹き颪はそういった元々冷たい大気を巻き込んで吹くため、フェーン現象の説明をしたように数学的に求められるような温度上昇より上昇幅は低くなり、ほとんど打ち消されるどころか逆に冷たい大気のほうが勝ってふもとのほうに冷たい風が吹き込むこともあります。

またボーラ現象と呼ばれる風も存在します。ヨーロッパアドリア海にふくアルプスからの北風のことです。アドリア海沿岸は地中海性気候なので温暖な気候です。そこにアルプスからの風が吹き込むので多少フェーン現象で温度上昇が起きたとしても相対的に冷たい地方からの風が吹き込むことになり非常に冷たい風となります。このように風が吹く場所ともともとその風が来た場所とで温度が大幅にちがう時は(特に元の空気が冷たい場合は)山からの吹き颪は非常に冷たいものになります。

このように山からの吹き颪は通常冷たい(あるいは体感的に冷たく感じる)ことが多いです。なので我々が普通感じている山らからの吹き颪は冷たいという感覚は間違っておらずフェーン現象による温度上昇はあくまでも稀に起きる気象現象として理解するのが適切であるといえます。

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