山風・谷風

パラグライダーやハンググライダーなどは山岳地帯でフライトをすることが多くなるので、平地とは異なる山岳地帯特有の気象を頭に入れておくことが必要になり、その一つが今回お話しする山風谷風です。

簡単に言うと谷風とは日中に山の斜面に日射を浴びて暖かくなった空気が谷底にそって山の斜面を駆け上ることで生じる風で、山風は反対に夜間に冷却された空気が谷底にそって斜面を下ることで生じる風です。
個人的には谷風・山風がどのような現象かはわかっていても、谷風(あるいは山風)が斜面を駆け上るのか下るのかどちらを意味するのかたまに自身をなくすことがあるが、どちらから吹いてくるか名前がそれを示していると覚えることにしている。つまり谷風とは谷間(低いところ)から吹く風だから駆け上る風、山風は上から吹く風だから下る風だと思い出せる。

山風・谷風は斜面で空気が温められる、あるいは冷却することで空気の密度に差が生まれて動くことがそのメカニズムなので、例えば日の出後、日射を浴びて谷風が吹くときは山のふもとから山頂に向う風がいきなり生じるように考えてしまうことがあるが実はそうではなく、もう少し細かい空気の流れが生じることから谷風は始まる。

下の図をつかって説明します。

Valley_breeze

まず斜面が日射を受けて温度が上がると、山頂に向って(上の方向)風が吹くのではなく、横方向の斜面に沿って空気の上昇が始まる。(谷の右側の斜面では右の方向へ)これは斜面の角度がより緩やかな方向にむかって空気が上昇するためである。
尾根を越えるともう斜面はなくなるため、今度は上空に向って上昇を始めるがサーマルが大きく上昇を続けるような温度差(密度差)はついていないため、上昇はまもなくとまる。すると谷間から斜面に沿って空気が移動していたため、全体的に見ると谷間の空気密度が減るため相対的に気圧が下がるため、上昇した空気は谷間にむかって下降する。谷間に下降した空気は再び日射で温められ斜面にそって上昇するというサイクルが続くことになる。このような風の流れを斜面風と呼ぶ。

斜面風が吹きつづけるということは日射で温まった空気が再び谷間で日射に温められるという現象が生じるので、谷間の温度は少しずつ周囲より上昇していくことになる。その結果相対的に平野部よりもより気圧が低くなりやすくなり、山間部の斜面近辺でぐるぐる循環していた空気の流れが少しずつ平野部から山に向かう流れに変わってくる。そして午後になると斜面風の成分はほとんどなくなり、山のふもとから山頂に向かって谷底を沿う風の流れが大半を占めるようになる。

パラグライダーやハンググライダーを楽しむうえではこの谷風はテイクオフ時の向かい風だけでなく、斜面上昇風をも生み出すものであり非常に重要な気象現象といえる。

一方夕方以降日射が弱まり、夜間になると空気は冷えて下降気流となる。この時も谷風と同じように斜面に沿って循環する斜面風からはじまり、最後には山頂からふもとに向かう成分のが大半の山風となる。ただしスカイスポーツは有視界飛行が前提なのでフライト中に山風に出会うことはまずない。
ただ誤解しないでいただきたいのは、日中のフライト中に山風・谷風の原理による山頂からの吹き颪の風に出会うことはほとんどないだろうが、季節風や低気圧などの影響を受けて発生する吹き颪は日中・夜間をとわず条件が整えばいつでも発生する。このようないわゆる颪は斜面に沿って駆け下る山風と同様、フライヤーからしてみるとテイクオフでは背風、フライト中は安定した(かなり強い)シンク帯に遭遇することになるので、このような条件では飛ぶことは避けるべき、あるいはすでに飛んでいるときは早めにおろすことが大事になってくる。

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