雲の中はリフトが強い? ー 雲の吸い上げについて

サーマルトップの高度、雲底高度、雲頂高度の予測方法について説明しました。雲長高度の説明はさわりの部分だけで他の要素も色々影響を与えますが、スカイスポーツをする上で雲長高度そのものを知ることはあまり重要ではないと思うので、あまり深くは触れないでおきます。

今回は良く耳にする雲の吸い上げとはなにかについて説明したいと思います。

まとめ

  • 雲の吸い上げとは雲底近くでリフトが発生したり、それより下のほうで発生していたリフトよりも強いリフトが得られる現象のこと。乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の値の差がその理論的な原因である。
  • 積雲があれば常に雲の吸い上げがあると言うわけではない。雲底と雲長の差が少ない背の低い積雲の場合は行き場を失ったでさえぎられるようになり、雲底に近づくほどリフトが弱いと言う現象が起こりえる。ブルーサーマルのサーマルトップでも同じようなことがおこる。
  • 雲の吸い上げを使えば強いリフトを簡単に維持することができ、雲の下を飛びながら風向きの沿って飛ぶことで高度を失わずに長距離飛行することが可能。

詳細説明

雲の吸い上げと言うのは皆さん良く耳にする単語だと思います。積雲の雲底近くまで揚がると、まるで雲が空気を吸い上げてくれるように、リフトが発生し、時に雲底まで達するサーマルのリフトより強いリフトが得られるト言う現象です。
もちろん有視界飛行をしなくてはいけないスカイスポーツでは雲中飛行は絶対に行ってはいけませんので、雲底ぎりぎりに張り付くようにすれば長い時間滞空できるし、長距離の移動も時には可能になります。
また日中たくさんの日射があり、かなり積雲がぼこぼこ発生し日射がさえぎられるようになった後、地表近くの低い高度では渋めの条件になってくるが、雲底近くにいれば雲の吸い上げによって比較的強いリフトが維持されることもある。

なぜこんなことがおきるのでしょうか?

サーマルによるリフトは繰り返しにはなりますが、空気の密度差によるものです。温度が高いほど密度が小さく軽くなり上昇します。簡単に想像できると思いますが、その密度差、つまり温度差が大きければ大きいほど上昇するスピードも速くなります。

ここで勘違いしてはいけないのは、重要なのは温度差であって、温度そのものではありません。スカイスポーツを始めたばかりの人は夏場のほうが気温は高いので、よりサーマルは強くなるのではないかと考える人がいます。
日本の夏場を想像すると分かるのですが、日本列島は太平洋高気圧に広く覆われていて東高西低の気圧配置になります。この場合日本列島上空には太平洋からのしめった暖かい空気が入り込んでくるので気温減率はどうしても低くなってしまいます。すると大気がより安定した状態になるため、いくら強い日射を浴びた空気塊の温度が高くなっても上空の空気との温度差は底まで大きくならず、サーマルも穏やかになることが多いです。
一般的にサーマルが強くなるピークシーズンは春先の空気が乾燥していて、また上空にはまだ冬の冷たい空気が残っているような時期の天気の良い日に発生します。ただサーマルが右翼なるということは荒れた天気でリフトが強い反面シンクも強いのでしっかり経験を積んだパイロットでもこの時期は結構こわい思いをします。

話が横道にそれてしまいましたので元に戻しましょう。上昇する空気塊の温度と周りの大気の温度の差が大きいほどリフトは強くなると言うことは、上昇するにつれ大気温度がより低くなるか、空気塊の温度減少が少なくなればリフトは強くなると言えます。

前者の大気温度が上昇すると共に低くなればもちろんそれに越したことはありませんが、これは雲の吸い上げとは直接関係していません。雲の吸い上げは後者の空気塊の温度減少の割合が少なくなることに起因しています。

すでに何度も出てきていますが、空気中の水蒸気が飽和する前は乾燥断熱減率で温度が低下し、水蒸気が飽和した後は雲が発生し湿潤断熱減率で温度が低下します。乾燥断熱減率は約10℃/1000mに対し、湿潤断熱減率は3~9℃(目安としては5℃)/1000mですので、雲が発生した後の減率のほうが低い数字になっています。周りの大気の温度減率が同じであるとした場合、雲が発生した後のほうが温度差を高く保ちやすくなるので、リフトがつよくなると言う現象がおきやすくなります。グラフでみてみましょう。

吸い上げ

例として地表の温度は23℃、その日の最高気温は25℃、地表での露点は22℃だとします。
エマグラムはTypicalな例として標準大気の気温減率(6.5℃/1000m)としています。

地表面では2℃あった温度差も空気塊が上昇すると共にその差は小さくなり、露点に達するころには1℃以下になっています。これは乾燥断熱減率のほうが標準大気の気温減率より大きな数字であるためです。気温減率がいつも6.5℃/1000mであるわけではありませんが、平均値と考えてよいので、一般的には露点に達するまでは温度差はどんどん小さくなっていくと考えてよいと思います。

一方露点に達した後は湿潤断熱減率で温度が下がりますので、緩やかながら紫の線と黒い線の距離は高度が上昇すると共に開いていくのが分かります。雲が発生した後は温度が下がりにくいからです。このように露点に達した後は温度が下がりにくくなる影響をうけてリフトが強まると言う現象がおこります。これがいわゆる雲の吸い上げの原理です。

しかし雲の吸い上げはいつもあるわけではありません。下の例をみてください。

吸い上げ2

温暖前線などの影響で高度380m-550mぐらいで高度が上昇するほど大気温度が高くなるような現象がおきています。これを逆転層と呼びます。
露点に達した後も空気塊の温度が高い限り上昇は続けますが、逆転層の影響で430mほどで上昇が止まってしまいます。それ以上上に上がれないような抵抗を受けることになるのでこれまで上昇していた空気塊には急激なブレーキがかかるようになります。このようなブレーキは雲頂で発生するのではなく雲長よりも下の高度までその影響が及ぶため、この例のように雲の背が低い場合はその影響は雲底付近まで受けることになります。この場合ももちろんリフトは存在しますが、ブレーキがかかったような状況になりうえに行けば行くほどリフトは弱くなります。このような場合は雲の吸い上げ効果は期待できないばかりか、効率の悪いソアリングになってしまいます。よって積雲の背が低いような場合は雲の吸い上げはほとんど期待できないと考えてよいです。

なおこのようなブレーキがかかる減少はブルーサーマルでも同じです。
ブルーサーマルの場合でも空気塊の上昇が止まる高度より下のある程度の範囲では同じようにブレーキがかけられる状況にあると考えられるので、サーマルトップの近くではリフトが弱くなることがあります。

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