雲のないところにサーマルはない? - サーマルの到達高度

前回は大気の安定性について説明しました。上空に寒気が入るなどして温度減率が大きくなると(温度が下がる割合がより大きくなると)不安定になるんでしたね。今回はサーマルの到達高度について説明したいと思います。

まとめ

  • 日射に暖められて上昇する空気塊(サーマル)は周りの大気と同じ温度になる高度まで上がる。その日の最高気温を通る断熱減率の傾きを持つ直線と、大気温度が交わる点を求めることでサーマルトップが予想できる。
  • 空気塊の水蒸気が飽和する、すなわち雲ができる現象も忘れることは出来ず露点温度を考慮する必要がある。露点温度は気圧と共に変化し、1000m当たり2度下がる性質を持つ。
  • 乾燥断熱減率をもつ直線が大気の温度に達する前に(グラフで交わる前に)、露点に達した場合はその高度で雲が発生し、雲底高度が予想できる。そこからさらに上昇する空気塊は湿潤断熱変化をおこなう。湿潤断熱減率の傾きを持つ直線と対気温が交わる点が雲頂高度となる。
  • 露点に達するよりも先に空気塊の上昇が止まってしまうような場合はサーマルが発生していても積雲は発生しない。積雲がある=サーマルがあるではあるが、積雲がない=サーマルがないとは必ずしもいえない。

詳細説明

サーマルトップ

すでに日射によって暖められる空気塊(サーマル)は高度の上昇と共に断熱変化をし、乾燥/湿潤断熱減率の割合をもって温度が下がっていきます。またこの上昇する浮力は空気塊と周りの大気の密度の差によるもので、日射で暖められた空気塊は温度が高く軽いため上昇していくので、断熱変化と共に温度が下がりいつしか回りの大気温度と一緒になってしまうとそれ以上腐食は発生せず、それ以上上昇しません。つまりその高度こそがサーマルトップです。

ではこの前に説明でもつかった2015年7月1日、館野のエマグラムで考えて見ましょう。エマグラムのデータは以前にも紹介しましたが色々なサイトから入手可能です。(たとえばここ)
入手した気温と高度(気圧)のデータをから折れ線のエマグラムを書くことが出来ます。

(正しいエマグラムは縦軸は気圧(片対数グラフ)です。より直感的に分かりやすくするために私は縦軸を高度とすることが多いですが、より厳密に気圧と高度を片対数で表記してつかうこともあります)

つづいてサーマルが上昇する際の温度減少の線を記入します。その線は1000m当たり10℃温度が下がるような傾きを持つ線です。
あれ?傾きは分かるけどどこから引けばいいの?このように思う人が大半ではないでしょうか。

傾きが分かっても通る点を見つけないと直線は引けませんね。ではどの点を通るように書けばいいのでしょうか?それにはいくつか考え方があります。

  1. 今の地表面の温度
  2. その日の最高気温
  3. その日の最高気温+3℃

1は今現在のサーマルトップを知りたいときに引くべき線です。午前中早くにエリアについて朝から風もよいしそこそこ日射も出てるけれど、もうサーマルは発生しているかなって考えるときに使えます。

2はその日のサーマルトップの最高高度を調べる方法です。エマグラム(大気の温度)は数時間と言う単位では大幅に変化することはないので、一番サーマルが温まっているとき最高気温の時がサーマルの高さも高くなります。昼前後にかけて飛ぶ時、今日は行くかどうか迷っていてソアリングできそうならいこうかなという判断をしたいとき、競技やXCの計画を立てるのに使います。

3は私の個人的な考えですが、いわゆる最高気温とは気象観測機器が百葉箱にはっておかれる場所での温度です。サーマルはより温まりやすい地形で温まった空気塊が上昇するものなので、コンクリートの道路や工場のようにより温まりやすいところでは、観測上の最高気温より温度は高くなるはずです。それが何度高くなるかといわれると正確には答えられないので、とりあえず3℃くらい高めで線を引くことがあります。ただしこれはあくまでも参考値。2で求める高度をベースにしてもしかしたらこれぐらいまであるかもしれないという心の準備をしておくのに使います。

地表面の高度でこれらの温度をプロットして直線を引けばよいことになります。地表面とわざわざ書いたのはフライトエリアの標高が高いところと海沿いとでは異なるからです。今回は高度0としてグラフを書いてみます。

thermal_top

実際にプロットしたのが上のグラフです。この日は一日中曇り空で日中の最高気温度があがらなかったため上の1と2は同じ直線になるので2つの線しか書かれていません。
このグラフからはケース1/2ではつねに大気温度より温度が低いのでこのような場合はサーマルが発生しません。気音減率がほぼ10℃/1000mなのでいわゆる条件付不安定なので、乾燥断熱減率を考えている今は大気は安定と言うことで納得できます。一方ケース3では約800mぐらいがサーマルトップであることが分かります。
このように3℃違うとサーマルがでたり出なかったり、サーマルトップの高度が大きく変わるのです。ただ大気の温度分布次第でどうなるかはまったく異なるのでご注意ください。

これでサーマルトップの高度がわかりましたね!めでたし、めでたし…

と言いたいところですが、残念ながらそう簡単ではないのが自然現象を相手にするスカイスポーツの楽しいところ。この説明は間違ってはいませんが、一つ忘れていることがあります。それは乾燥断熱減率であると仮定して、湿潤断熱減率を考慮していない点。つまり空気は乾いていて雲が出来ないと考えている点です。

実際には空気には水蒸気が含まれていますので、上昇する空気塊が露点より低くなれば雲が発生します。そして雲が発生した後は湿潤断熱変化をするようになるのです。

ではまず露点、および雲が発生する高度について見てみましょう。地表面での露点温度はエマグラムのデータから入手できます。飽和水蒸気量は気圧によって変化するため、露点も気圧が変化する(高度が上昇する)と変化しますが、その変化率は1000m当たり2度です。では先ほどのグラフに露点の変化する線を書き込んで見ましょう。なお1/2の線ではサーマルが発生しないので3の最高気温+3℃の線のみで説明します。

could_base

露点温度の線と乾燥断熱減率の線が高度500m、温度18度のところで交差します。この高度で上昇する空気塊に含まれる水蒸気は飽和し雲が発生し始めます。よってこの場合の雲底高度は500mだと言うことがわかります。

雲が発生した後は湿潤断熱変化をしますので、今度は赤い色の線である湿潤断熱減率の傾きをもった線にそって温度が変化していきます。このグラフからは約1150mくらいの高度で対気温の線と交差しますので、これ以上雲は上昇できません。よってここが雲頂高度になるはずです。

ようやく雲が発生する場合も分かりましたね。これで説明は大体終わりなのですが最期に今回の記事のタイトルである雲(対流活動による積雲)のないところにサーマルはないのか?について説明します。

積雲があると言うことは空気の対流活動が活発でサーマルが発生しているということに他なりません。「積雲がある=サーマルがある(ソアリングに使えるかどうかは別)」ですが、積雲がない=サーマルがないとはいえません。実はサーマルが発生していても積雲が発生しない場合もあります。

そのような気象条件が発生した日が分かればその日の実際にデータを使えばよいのですが、あいにく何年何月何日にそうなったかは分からないので、説明のためちょっとデータをいじってみます。

エマグラムは先ほどまでと同じもの、最高気温が22度、また空気はとても乾いていて地表面で16.5度だったとして、書いたものが下のグラフです。

blue_thermal

この場合、上昇する空気塊の温度減少を示す線(乾燥断熱減率)は露点に達する前の約650m程度のところで、周囲の大気温度の線と交差しています。この場合、サーマルは650mまでは発生していますが、雲は現れません。このように雲を伴わないサーマルをブルーサーマルと呼びます。サーマルが発生するのは日射があるとき。日射があると言うことは空は晴れていて(高層の雲はない)青空が見える。青空の中で突然出会うサーマルなのでブルーサーマルと呼ばれています。

スカイスポーツをする人は上空にもくもくした積雲が浮かんでいるといい条件だろうなぁと反射的に考えてしまいますが、雲ひとつない天気の日ももしかしたらそこには目に見えないサーマルが発生しているのかもしれません。

カテゴリー: 大気の安定性 タグ: パーマリンク

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