上空に寒気が入ると不安定? - 大気の安定性

前回は高度が上がるつれて気温がどのように変化(減少)していくか学びました。いわゆる大気の対流現象がおきている範囲では約6.5℃/1000mを気温減率とよび、平均値として参照することができるが、実際に気温減率は一定ではなく6.5℃より小さいこともあれば大きいこともあります。今回はどういうときが大気が不安定になるかを考えてみましょう。

まとめ

  • 大気における安定性は日射によって暖められた空気塊が上昇した際に、もとの状態に戻るような力が働くかどうかで判断し、上昇速度を遅めながら最期には上昇が止まってしまう場合を安定、上昇速度を速めながらどんどん上昇を続けていく場合を不安定と言う。
  • 大気の温度減率が乾燥断熱減率より大きな数字となる場合は不安定、湿潤断熱減率より小さな数字となる場合は安定、その間の場合は条件付き不安定という。
  • 上空に寒気が入るということは温度の下がり方が急になるということなので、温度減率の数字はより大きくなるため大気が不安定になる。

詳細説明

安定性とは?

大気の安定性の説明をするまえに「安定性」とは何か?を確認したい。「安定性」と言う言葉には「静的安定性」と「動的安定性」の2種類が存在する。

「静的安定性」とはなにか外乱によって今ある状態から変化してしまった場合に元に戻ろうとする力が働くかどうかが鍵である。よくある例であるが下の三つの絵を見てもらいたい。

Stability

地面の上に置かれたボールであるが、誰かが手でボールを右に動かした後その手を離したとしよう。左の図では地面がお盆をひっくり返したようになっているので右に動いたボールは左に戻ろうとする。中の図では右に動いたボールは右に動き続けるが減速も加速もしない(地面の抵抗はないとする)。右の図は斜面を転がり落ちるように一度右に動くとどんどん加速していく。このように元の状態に戻ろうという力がかかるか、何も力がかからないか、元の状態から遠ざかるように力が加わるかが違いであり、左のケースを「安定」、右のケースを「不安定」、中のケースを「中立」という。

一方「動的安定性」であるが、「静的安定」である場合をさらに細分化したもので最終的にどのような状態になるかが判断基準である。上の図の左のようなケースの場合でボールと地面の間に抵抗が発生するとしよう。ボールから手を離すとボールは斜面を転がって左に動くが、すぐにお椀の最下部でとまるわけではなく、最下部を通り越して左のほうまで動く(オーバーシュート)。重力と抵抗をうけて手を離した高さよりも低い位置で止まり、今度は右に動き始める。しかしまたオーバーシュートし、右までうごいてしまう。しかしその高さは先ほどより下がっている。以下同じ用に何度かオーバーシュートを繰り返したのちに、お椀の最下部で止まるはずである。このように最終的には釣り合いの取れた点に戻ってくる場合を「動的安定」という。「動的安定」は上記のようなオーバーシュートを繰り返す場合もあれば、オーバーシュートせず一回でぴたっとつりあい点に戻るような場合もある。

Stable

つづいて、もしお椀とボールの間に抵抗が働かなかった場合を考えてみよう。結論をいうとこの場合は振幅が同じまま右にいったり左に行ったりを繰り返す(減衰なし)。このような状況を「動的中立」という。

neutral

最期に「動的不安定」であるが、これまでの説明から想像できると思うが、オーバーシュートを繰り返し最終的に振幅が無限大に発散するような場合である。これまでのような地面の上におかれたボールではうまく説明できないので、へたくそな練習生のグライダーの操縦を例に説明したい。本当は北の方角に向って進みたいが10度ほど進路が右にずれているので左に旋回しようとする。練習生はパイロットの場合旋回して北の方角を向いてから初めて旋回をやめる動作を行う。しかしグライダーはすぐには旋回を止めないので北の方角よりもやや左を向いてしまう。(オーバーシュート)
行きたい方向より行き過ぎてしまった練習生は、あせって右に旋回を開始するが早く元に戻ろうとしていつもよりバンクを深く入れてしまう。しかしオーバーシュートしないためには向き他方講を向くよりちょっと前にあらかじめ旋回を止める動作を始めなくてはいけないが、練習生はそんなことは理解していないので、またオーバーシュートし、かつ深いバンクで旋回していたので旋回速度が速く先ほどよりもっと右を向いて止まってしまう。さらにあせった練習生はより深いバンクをいれ左旋回を開始する…

こんな絵に描いたような展開にはなかなかならないでしょうが、このように静的安定にもかかわらずどんどんどんどん中立状態から離れて言ってしまう場合を動的不安定と呼ぶ。

Unstable

気象における安定性は主に日射によって暖められた空気が上昇することで発生する対流減少を対象としているので、暖められた空気塊が上昇した際に、上昇速度を遅めながら最期には上昇が止まってしまう場合を安定、上昇速度を速めながらどんどん上昇を続けていく場合を不安定と言う。なお大気の対流減少の場合静的安定であれば動的にも安定であり動的安定性は重要でない。そのため、静的安定性について整理をする。

大気の安定性を左右するもの

大気の安定性は空気塊が上昇が加速されるのか減速されて最終的には止まってしまうのかが判断基準である。空気塊が上昇するかどうかは空気塊と周りの大気の温度差からくる密度差によるため、大気温度の勾配(対高度)で決まってくる。

これまでに学んだとおり日射によって暖められた空気塊の温度変化は乾燥/湿潤断熱減率、つまり約10℃/1000m(乾燥)、または約0.5℃/1000m、で決まっている。この温度の減少具合よりも大気温度がより減少するようであれば不安定、減少が少なければ安定と言える。

大気の温度が1000m当たり11℃減少するとしよう。この場合、上昇する空気塊の温度がより下がりやすい乾燥断熱減率を当てはめたとしても(雲ができる前)、上昇する空気塊の温度の方が高い状態を維持できるので上昇は続き不安定である。一方大気の温度が1000m当たり4℃減少するとしよう。この場合温度の下がり方がより小さい湿潤断熱減率を当てはめたとしても(雲ができた後)、空気塊の温度は周りの大気より低くなってしまうので上昇は維持できない。よって安定である。

つまりグラフに示されたピンクの領域である乾燥断熱減率より大きな割合で温度が下がる場合は不安定、青の領域である湿潤断熱減率より小さな割合で温度が下がる場合は安定である。ではその間に挟まれた黄色の領域はどうなるか?

この場合、雲が発生する前の乾燥断熱変化をする場合は安定であるが、雲が発生した後の湿潤断熱変化をする場合は不安定である。このように上昇する空気塊が飽和しているかしていないかという条件によって変わる場合を条件付き不安定という。

Stability2

いいかえると高度が上昇するにつれ温度が下がる割合が大きければ大きいほど不安定、小さければ小さいほど安定であると言える。なので、上空に寒気が入るということは上空の空気の温度の下がり方が大きいということなので大気が不安定になるということが理解できる。

説明が長くなったので今回はこれでおしまいにして、次回は雲底高度とサーマルトップの予測の仕方を説明します。

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