空気は上昇するにつれ温度が下がる ー 空気の断熱変化について

スカイスポーツを楽しむ上で大気の安定性を把握することは非常に重要です。冷たい寒気が上空に入ってきていたら不安定という理解は間違いではないけれど、やはりサーマルの上昇風をうまく予想してフライトプランを立てる際に、漠然とした理解ではなくしっかりと理論を理解して参考にすることはとても有効なので、気象のことが嫌いな人でも大気の安定性については頑張って勉強する価値はあると思います。
大気の安定性とは簡単に言うとサーマルの出来やすさと言ってもよく、フライトプランを練る際に今日のサーマルトップや雲底はどれくらいだろう?サーマルの強さは何m/sほどか予測するのに必要な知識をまとめてみたいと思います。

今回は大気の安定性の話に入る前に、まずは日射で暖められた空気塊が上昇するにつれてどのような変化をするか考えたいとおもいます。

まとめ

(今回のように説明が理論っぽくなったり、数式がたくさん出てきたりしてとっつきにくい場合は抑えておきたい要点のみをまとめてまず初めに紹介し、さらに細かい理論などを知りたい方のために補足説明として説明を足すようにしてきたいと思います。)

  • 日射によって暖められた空気はひとたび上昇を始めた後は太陽から熱を得ることも、周りの空気に熱を吸収されることもなく、熱の出入りがない断熱変化(膨張)をする。
  • 空気が断熱変化する際は高度(圧力)と温度が一定の割合で変化する。
    雲が発生する前の乾燥した空気では高度が100mあがるにつれ温度は約1度下がり、これを乾燥断熱減率という。
    雲が発生した後の湿った空気では高度が100mあがるにつれ温度は約0.5度下がり(0.3~0.9の間で変化する)、これを湿潤断熱減率という。
  • 横軸に温度[℃]、縦軸に高度[m]をとってプロットしたり直線を引くと使いやすい図になる。
    (本来エマグラムは縦軸が気圧となる)

断熱減率

詳細説明

空気は日射により直接暖められるのではなく、暖められた地面から熱をもらって温度が上がること、温度が熱くなると密度が軽くなって上昇を始めるのは以前説明した通りです。(詳しくはこちらこちら)
この上昇する空気塊について着目しましょう。

上昇を始めた空気塊は地面から離れます。これまで地面から熱をもらって温度が上がっていたのですが、ひとたび地面から熱をもらって温度があがり上昇をはじめた後は地面から太陽の熱を吸収することは出来なくなります。(入熱がない)
上昇すると言うことは空気塊の周りの空気のほうが重たいということで、上昇する空気塊は数度温度が低い周りの空気の周りにさらされます。厳密には多少熱が逃げていくのですが、空気は熱を伝えにくい(熱伝導率が低い)ので、熱が逃げていくこともないと仮定することができます。(放熱もない)

空気塊は上昇するつれて圧力が下がります。入熱も放熱もないような状況下で圧力がどんどん下がっていきますので、断熱変化という変化をしながら空気塊の温度が下がっていきます。
空気が暖められて温度が上がると

    \[\frac{T}{P^{\frac{k-1}{k}}}=Const\]

Tは温度、Pは圧力、kは比熱比

つまりこの式にしたがって高度上昇に伴う圧力変化によってどれだけ温度が減少するか求めることが出来ます。高度と圧力の関係についてはバリオの説明ページで紹介していますが(こちら)

    \[P=P_0  (1-0.0065  h/(t_0+273.15))^{5.258} \]

で表すことができるので、気になる人は自分で高度と温度の関係式に転換してみてください。

ここで残るは比熱比kですが、空気の場合はk=1.4ですのでこの数値を用いて高度と温度の変化を計算すると、私の計算では1000mの高度上昇あたり、9.7度温度が下がります。これを乾燥断熱減率とよび、雲が発生するまでの空気塊の温度減少率を意味します。ものの本では乾燥断熱減率は10℃/1000m、または1℃/100mとしていることが多いですが、乾燥断熱減率は熱力学の第一法則の微分方程式からちゃんと導出することができ、その値は\frac{g}{C_p}となります(gは重力加速度、C_pは低圧比熱)。温度によって変化しますが、大体9.76ぐらいです。

ただしいわゆる気体の状態方程式は理想気体のみに適用でき、実ガスの場合はちょっとずれます。また比熱比は水蒸気を含む湿り空気の時と水蒸気を含まない時とで異なります。こういったもろもろのちょっとした誤差に加え、普段フライトで使うであろうバリオに装備されている温度計の誤差、フライトする高度はせいぜい高くて3000m程度とすれば10℃/1000mと9.8℃/1000mの差はわずかに0.6度。ほぼ無視できる値と考えられるので、理屈上は9.76℃/1000mと覚えておいたほうがいいと思いますが、実用上は簡単に計算できる10℃/1000mで問題ないと考えます。

では雲が発生した後、つまり飽和状態にある水蒸気を含む空気塊が上昇するとどうなるでしょうか?

このときも周りからの熱はないものとして考えることが出来るので断熱変化を前提条件におくことが出来ます。これまでと異なる点は乾燥空気は混合気体として捉えることのできたのですが、飽和蒸気を含む場合、水蒸気が水滴に凝結する相変化を考えなくてはいけません。つまり潜熱の影響を受けます。

潜熱は相変化に伴う発熱/吸熱反応で、以下の通りまとめることが出来ます。

  • 固体から液体、もしくは液体から気体に変化するときは吸熱する
  • 気体から液体、もしくは液体から固体に変化するときは放熱する

よって今考えている現象は水蒸気が凝結する相変化なので放熱を伴います。

外からの熱の授受はないのですが、内部で熱を発生するので飽和蒸気を含むときの減率(湿潤断熱減率)は乾燥断熱減率より低い、つまり温度が下がりにくいものになります。

では湿潤断熱減率の値がいくらになるかということですが、実は気温と気圧によって大きく異なり3~9℃/1000mの間で変化します。例えば標準大気状態である1013.25hPa/15℃では4.84℃/1000mですが、温度が25℃に変わると3.99℃/1000mと結構大きく変わります。

湿潤断熱減率は一定の値で記載するのは不適切ですが、5℃/1000mという目安を覚えておくとよいと思います。

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